※よく来たね。この日記は九龍妖魔学園紀のクリア後ボーナス使用設定で進むパロ小説だそうだ。基本的にオリジナル設定でネタバレ前提なので、閲覧には注意することだ。気にいったのなら、またおいで。(瑞麗)
※※※※※※※※
僕が目を開けた時、そこに見えたのは明るい月の光と・・・・
「・・気が付いたね」
吸い込まれそうに深い、漆黒の瞳だった。
「緋勇、君?」
ぼんやりとした意識の中で、彼の名を思い出し、呼んでみる。
その声が届いたのか、彼は驚くほど優しく微笑んだ。
・・・どうして。
僕は途切れ途切れの記憶を辿りながら、泣きたくなった。
僕は、君や、葉佩君や、八千穂さんを
殺そうと、したのに。
どうして君は、そんなに優しい目を向けてくれるんだろう。
「もう泣かなくていいよ」
「・・でも、僕は」
「思い出しただろう?」
「・・・」
そう、僕は・・・思い出した。悲しさから逃げ出すために手放してしまった、本当に大切だった物を。
取り戻してくれたのは・・・君たちだ。
「だったら大丈夫。もう一度、始めてごらん。今度はきっと、前に進めるから」
・・・・不思議だ。
彼の言葉が、額に触れた手が、温かく全てを包み込んでしまう。
僕は・・・。
僕は、もう一度やり直せるだろうか・・?
色んな人を傷付けた、弱い僕が・・?
「できるよ。君にはちゃんとその力がある。それに、君はもう1人じゃない。信じて?自分と・・友達を」
「緋勇君・・」
ありがとう。
そう言いたかったのに、声にならなかった。
こみ上げる熱が頬を濡らす。
悲しいのでも、辛いのでもなく、僕は姉さんが死んでから初めて、嬉しくて、泣いた。
・・・・・僕の頭があるのが、緋勇君の膝の上だと気付くまでしばらく時間がかかってしまったのは・・そういう訳で・・・・・・・。
「でもホントに良かったねッ!もうなんともないんでしょ?」
「つっても体力は相当落ちてるハズだかんなー。無茶しない方がいいぞ?とりっち」
「う、うん・・・」
「なんだ葉佩、『俺の龍にい』の膝を独占していた相手に結構寛大だな。さっきまで指くわえて泣きそうな目で見てたくせに」
「アラヤダ、トゲのあるお言葉ですヨ皆守さんたら。ホホホ自分も食い入るように熱視線を向けてた人の言うコトかしら」
「・・・・フフフフ・・・」
「・・・・ホホホホ・・・」
「わー!青い火花が散ってるッ!ブラコンVS悪い虫対決ッ!?」
「誰が虫だ!」
「俺はブラコンだが!」
「あ、あの・・・・そ、その話はもう・・・」
僕は、少し離れたところを歩いている緋勇君をこっそり窺った。
聞こえていないのかな、そうだといいな、と思いながら。
・・・・あれから、僕は助けてくれた葉佩君、八千穂さん、皆守君に、心から感謝と、謝罪を告げた。
葉佩君は快活に、八千穂さんは明るく、皆守君は億劫な様子で、それぞれ答えてくれた。
そして、それを見ていた緋勇君は。
・・・緋勇君は、ただ静かに微笑ってくれた。
あの、宇宙の深淵にも似た黒い瞳を細めて。
不思議な人だと思う。
地下にいる時の記憶は全てがぼんやりと霞がかかったようで、あまり思い出す事はできないのだけれども、僕を止めてくれたのが彼だということはなんとなく分かっていた。
『呪われし《力》』を退ける強さ。
抗えない引力を持つ瞳。
なにもかもを受け入れ、安らげてしまいそうなあの笑顔。
緋勇君と葉佩君、彼ら2人が《宝探し屋》という職業のためにこの學園に来たという経緯だけは、さっき簡単に聞いたけれど・・・。
何かひどく問いたげな皆守君と八千穂さんの前で、2人は「それ以上の詳しい話は、また明日」と言い切って歩き始めてしまった。
明日になれば、何が聞けるのだろう。
彼らの話が聞けたのなら、僕が彼らのためにできることが見付けられるだろうか・・・・?
ふと振り返れば、月の光が辺りを煌々と照らしていた。
・・・夜は、こんなに明るかったんだ。
そうか。たとえ、日の射さない場所だとしても。
「おーい、とりっちー、大丈夫かー?」
「あ、うん・・・ごめん、今行くよ」
そこに屈しなければ
きっと、光は届く。
だからだろうね。
君たちが、眩しいのは。
その光から、僕はもう目を逸らさない。
そして、それと同じように、闇からも。
「行こう、取手君」
「・・・・緋勇君」
「なに?」
「・・・・・・僕は、もう、負けないよ」
だから、どうか少しでも君たちの力になれますように。
そう願った時、不意に僕の頭を優しい手が撫でた。
「・・いい子だね」
まるで、母や兄のような・・・そんな言葉と、仕草に、僕は、しばらく身動き一つ取ることはできなかった。
その夜、僕がなかなか眠れなかったのは、疲労の所為ではなかったと思う・・・・のだけれど。
その本当の理由を僕が知るのは、翌日のこととなる。
TO BE CONTINUED。
※※※※※※
乙女取手と王子緋勇(苦笑)。取手は変身シーンの記憶がありません。同い年(のはず)の男(のはず)に頭撫でられてどきどきな自分に大動揺。さて次回でようやくネタばらしかな?
※※※※※※※※
僕が目を開けた時、そこに見えたのは明るい月の光と・・・・
「・・気が付いたね」
吸い込まれそうに深い、漆黒の瞳だった。
「緋勇、君?」
ぼんやりとした意識の中で、彼の名を思い出し、呼んでみる。
その声が届いたのか、彼は驚くほど優しく微笑んだ。
・・・どうして。
僕は途切れ途切れの記憶を辿りながら、泣きたくなった。
僕は、君や、葉佩君や、八千穂さんを
殺そうと、したのに。
どうして君は、そんなに優しい目を向けてくれるんだろう。
「もう泣かなくていいよ」
「・・でも、僕は」
「思い出しただろう?」
「・・・」
そう、僕は・・・思い出した。悲しさから逃げ出すために手放してしまった、本当に大切だった物を。
取り戻してくれたのは・・・君たちだ。
「だったら大丈夫。もう一度、始めてごらん。今度はきっと、前に進めるから」
・・・・不思議だ。
彼の言葉が、額に触れた手が、温かく全てを包み込んでしまう。
僕は・・・。
僕は、もう一度やり直せるだろうか・・?
色んな人を傷付けた、弱い僕が・・?
「できるよ。君にはちゃんとその力がある。それに、君はもう1人じゃない。信じて?自分と・・友達を」
「緋勇君・・」
ありがとう。
そう言いたかったのに、声にならなかった。
こみ上げる熱が頬を濡らす。
悲しいのでも、辛いのでもなく、僕は姉さんが死んでから初めて、嬉しくて、泣いた。
・・・・・僕の頭があるのが、緋勇君の膝の上だと気付くまでしばらく時間がかかってしまったのは・・そういう訳で・・・・・・・。
「でもホントに良かったねッ!もうなんともないんでしょ?」
「つっても体力は相当落ちてるハズだかんなー。無茶しない方がいいぞ?とりっち」
「う、うん・・・」
「なんだ葉佩、『俺の龍にい』の膝を独占していた相手に結構寛大だな。さっきまで指くわえて泣きそうな目で見てたくせに」
「アラヤダ、トゲのあるお言葉ですヨ皆守さんたら。ホホホ自分も食い入るように熱視線を向けてた人の言うコトかしら」
「・・・・フフフフ・・・」
「・・・・ホホホホ・・・」
「わー!青い火花が散ってるッ!ブラコンVS悪い虫対決ッ!?」
「誰が虫だ!」
「俺はブラコンだが!」
「あ、あの・・・・そ、その話はもう・・・」
僕は、少し離れたところを歩いている緋勇君をこっそり窺った。
聞こえていないのかな、そうだといいな、と思いながら。
・・・・あれから、僕は助けてくれた葉佩君、八千穂さん、皆守君に、心から感謝と、謝罪を告げた。
葉佩君は快活に、八千穂さんは明るく、皆守君は億劫な様子で、それぞれ答えてくれた。
そして、それを見ていた緋勇君は。
・・・緋勇君は、ただ静かに微笑ってくれた。
あの、宇宙の深淵にも似た黒い瞳を細めて。
不思議な人だと思う。
地下にいる時の記憶は全てがぼんやりと霞がかかったようで、あまり思い出す事はできないのだけれども、僕を止めてくれたのが彼だということはなんとなく分かっていた。
『呪われし《力》』を退ける強さ。
抗えない引力を持つ瞳。
なにもかもを受け入れ、安らげてしまいそうなあの笑顔。
緋勇君と葉佩君、彼ら2人が《宝探し屋》という職業のためにこの學園に来たという経緯だけは、さっき簡単に聞いたけれど・・・。
何かひどく問いたげな皆守君と八千穂さんの前で、2人は「それ以上の詳しい話は、また明日」と言い切って歩き始めてしまった。
明日になれば、何が聞けるのだろう。
彼らの話が聞けたのなら、僕が彼らのためにできることが見付けられるだろうか・・・・?
ふと振り返れば、月の光が辺りを煌々と照らしていた。
・・・夜は、こんなに明るかったんだ。
そうか。たとえ、日の射さない場所だとしても。
「おーい、とりっちー、大丈夫かー?」
「あ、うん・・・ごめん、今行くよ」
そこに屈しなければ
きっと、光は届く。
だからだろうね。
君たちが、眩しいのは。
その光から、僕はもう目を逸らさない。
そして、それと同じように、闇からも。
「行こう、取手君」
「・・・・緋勇君」
「なに?」
「・・・・・・僕は、もう、負けないよ」
だから、どうか少しでも君たちの力になれますように。
そう願った時、不意に僕の頭を優しい手が撫でた。
「・・いい子だね」
まるで、母や兄のような・・・そんな言葉と、仕草に、僕は、しばらく身動き一つ取ることはできなかった。
その夜、僕がなかなか眠れなかったのは、疲労の所為ではなかったと思う・・・・のだけれど。
その本当の理由を僕が知るのは、翌日のこととなる。
TO BE CONTINUED。
※※※※※※
乙女取手と王子緋勇(苦笑)。取手は変身シーンの記憶がありません。同い年(のはず)の男(のはず)に頭撫でられてどきどきな自分に大動揺。さて次回でようやくネタばらしかな?
コメント